ベーシックインカム 日本 可能性

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ベーシックインカム 日本の可能性|給付額いくら?その理由とは

執筆者: 宮城正輝 健康管理士・生活のアドバイザー

 生活困窮者が増えると「給付金」の話題になりますが、海外では政府が全ての国民へ一定額を給付する「ベーシックインカム」の議論が活発であり、すでに実験が何度も実施されています。

 そんなニュースを見るので・・

日本でベーシックインカム導入の可能性は?

 これがあり得るのか気になる方が沢山います。そんな、海外の例から分かるベーシックインカムのメリット、実験して分かってきたことをまとめます。

ベーシックインカム 日本の可能性
  • ベーシックインカムが問題だと言われる理由

  • 政府から定期的にお金が入ると怠けるようになるのか?

  • 日本はいつから?可能性、導入金額はいくらを予想できるか

 これらの疑問について分かりやすく見ていきます。

ベーシックインカムが注目される理由:安定した生活のために

ベーシックインカムが注目される理由:安定した生活のために

 まずは、ベーシックインカムの概要をチェックする前に、ベーシックインカムが注目されている理由からです。

 今の日本はフルタイムで働いていながら年収 200万円以下が続く いわゆるワーキングプア層が増え続けています。さらに・・

予想外の収入減少
自宅待機、マンボウ、時短営業

 自分ではどうしようもない経済情勢や、感染症の流行などにより、収入が減ってしまう状況に追いこまれることを知りました。

 そんなことから、どんな状況に遭遇しても最低限のお金が手元に入ってくる「ベーシックインカム」を期待するようになります。

ベーシックインカムとは?

ベーシックインカム:最低限の生活保障

 ベーシックインカムとは、全ての国民にお金を与えて生活費を確保してもらうシステムです。

待望する方が多い
ベーシックインカム = 最低限度の生活保障

 もしくは「基本所得保障」と言われます。

 日本には、体に障害があるなど問題を抱えて仕事が困難なら生活費が支給される「生活保護」制度があります。また、リストラに遭ったときは次の職が見つかるまで失業保険の給付を受けることができます。

ピンチなら給付あり
生活に支障があるなら給付される

 このタイプの給付金で国が生活保障をするルールです。ですが、ベーシックインカムでは健康で仕事ができる成人・子供・老人まで、全ての国民が生活保障の対象となります。

ベーシックインカムを導入するメリットとは?

 働かずにお金をゲットできるなら「遊んで暮らせてラッキーだ!」と考える人ばかり注目されますが、ベーシックインカムには多くのメリットがあります。

日本のしくみを変える
生活を補助する制度を一つにまとめる

 働けない家庭やひとり親の家庭、子育て支援など「手当、給付金」がいくつもありますが、これらをベーシックインカムに一本化すると、手続きを簡略化でき職員を減らせる:行政コストの削減ができます。

 特に生活保護を申請する方はとても多く、審査にかかる職員、家庭を回って問診するケースワーカー、不正の証拠を押さえる「生活保護Gメン」まで必要になっています。

少子化が止まらないのは、お金がないから

 児童手当をはじめ、子育て支援の給付金がありますが、これを使って保育園、塾、高校、大学の学費をカバーするには遠く及びません。

 ベーシックインカムとして無条件に生活費が入ることが保証されているなら、子供の多い家庭を希望する方は増えると予想できます。子供が増えるということは・・

メリット多数
働き手が増える、買い手が増える、税収が増える、土地が売れる

 このような経済的にプラスの連鎖が期待できます。そしてもう一つ、子供が増えることを想定して作った年金制度があります。

払い損の年金制度を廃止してベーシックインカムへ

払い損の年金制度を廃止してベーシックインカムへ

 今の年金制度が「良くない」と感じる方は多く、日本は少子化に向かっているので若い人ほど「払い損」ではないか?とする意見をよく見ます。

 年金が支給される年齢は以前は60歳と決まっていたのに、平成14年の改正で・・

60歳から65歳に段階的に引き上げ

 こうなりました。このような「後になって変更」がアリなら、自分が65歳になったときには「70歳からもらえる」ルールに変更されているかもしれません。ネットでもこれに気がついた方は多くいて、年金制度とは・・

100年安心は本当か?
  • 団塊の世代が得をする制度

  • 若い人ほど払い損では?

 これが周知の事実になってきました。例えばSNS:Xを見ると・・

 このツイートにあるテレビ番組で紹介された学習院大学 鈴木亘教授の試算は「年金をどうする?」をテーマの討論会でも良く出てきます。

現在40歳の人は、約1000万円もの払い損となる

 鈴木教授が試算した「払い損」が間違っていないか、信頼できる情報をさらに探します。

みずほ総合研究所の「年金保険料は払い損」の試算

 こちらは少し古いですが、みずほ総合研究所の報告です。

 平均余命まで生きたときには「払い損はない」としています。ですが、これは調査した時期に「確定している情報」に基づいて試算しています。つまり・・

たびたび年金の受給年齢を引き上げるなどの見直し

 これがあったらどうなる?については、将来そうなった時にしか試算することができないので、今の段階で「損、得」の答えは出せないことになります。

内閣府の年金制度の意識調査で分かること

 内閣府の実施した世論調査で、「年金制度は、助け合うもの(総合扶助)と考えるか、自分の将来の積立金と考えるか?」の回答では・・

・31.9% → みんなで助け合う相互扶助
・45.1% → 自分の将来の積立貯金

 こんな回答になっています。損・得よりも「現役世代が高齢者を支えるべき」と考える方は32%ほど、それよりも「年金は将来の自分のお金」なので払ったお金が減ることはダメ!と考える方が45%で、ずっと多いことが分かります。

 そんな不安を感じている方が多い年金制度を続けるより、ベーシックインカムに一本化する考え方は、さほど的外れな選択ではないかもしれません。

ベーシックインカムの国民投票:スイスの場合

ベーシックインカムの国民投票:スイスの場合

 これまでスイスで行われた「ベーシックインカムが必要であるか」の国民投票においては、反対意見が多数になりました。しかし・・

ベーシック・インカムの導入案が76.9%の反対で否決された

 こんな結果となっています。

 スイスの例では世界で初めての試みであったため、他国の実績・指標がないことから慎重な判断をする方が多くなったのではないかと見られています。

ベーシックインカムに対する国民の関心が無く投票率が低かった

ベーシックインカムに対する国民の関心が無く投票率が低かった

 スイスにおいて否決されたベーシックインカム制度は、こんな内容のプランでした。

スイスのベーシックインカム
  • 全ての国民(大人)に2,500スイスフラン(約27万円)

  • 子供は625スイスフラン(約7万円)

 毎月、無条件で全ての大人に27万円を支給する大胆なプランであったため、困惑した方が多かったと見られています。政府を含めて多くの反対派は・・

なぜ否定するのか?
  • いま27万円の収入の方は 仕事を続ける意欲を失う

  • 企業の国外移転が加速して国の税収は減少する

 このあたりを危惧している方が多く、所得の低い国から多くの人がスイスへ流入する可能性についても指摘されていました。

ベーシックインカムの関心が薄い → 多くが否定をした

ベーシックインカムの関心が薄く多くが否定をした

 スイスの国民投票は 10万人の署名を集めて やっと実現したのですが、実際に投票所へ足を運んだ方はとても少なく・・

投票率の低さ(約46%)

 これが指摘されています。しかし、賛成が23%だったことをポジティブにとらえ、今後、再度の国民投票へ動き出しています。

リベンジを懸けて ベーシックインカム案の再出発:スイス

 前回の国民投票で強く示せなかった・・

財源には基本的に既存の税収や社会保障制度を充てる

 財源案を明確にすることで、国民に理解が得られるのでは?としています。

フィンランドのベーシックインカム実験の場合

フィンランドのベーシックインカム実験の場合

 一方で、実際にベーシックインカムの実験を2017年から続けているフィンランドのデータを見ると、ベーシックインカム制度が導入されたときの国民の行動が分かります。

 支給している額は月あたり約74,000円。このプランで実験したデータが発表されています。

フィンランドのベーシックインカム制度実験
被験者 毎月の支給額 収入・年齢・性別の違い
2,000人 約74,000円 なし:ランダム

フィンランドのベーシックインカム制度

 被験者の2,000人は 25歳以上58歳以下の中から(学生を除き)無作為に抽出しています。

ベーシックインカムで毎月74,000円を頂くとどうなる?

ベーシックインカムで毎月74,000円を頂くとどうなる?

 フィンランドのベーシックインカム実験の結果ですが・・

ベーシックインカムが雇用にもたらす影響は小さかった

 支給金額は月あたり74,000円なので仕事を辞めてフリーターを選ぶ方は皆無であり、就職意欲の減退にはならないことが分かります。

自営業で得た収入も得る 労働の意欲もキープできる

自営業で得た収入が得られ、労働の意欲もキープできる

 フィンランドのベーシックインカム受給者が、自営業として得た金額は・・

自営業で得た収入
ベーシックインカム受給者 一般の国民 差額
4,230ユーロ 4,251ユーロ 21ユーロ

 このようになります。ほんのわずかだけベーシックインカム受給者の収入が少ないですが、この差額は21ユーロ = 2,500円ほどです。

 自営業をして収入を得ている方の仕事への意欲も変わらないと言えます。

ベーシックインカムの意識調査:健康面でも良好な結果に

ベーシックインカムの意識調査:健康面でも良好な結果に

 健康面・ストレスを感じているのか?という質問ではこんな集計結果になっています。

健康・ストレスを感じているか?
BI受給者 一般の国民
健康:良い・又は とても良い 56% 46%
ストレス:なし・又は ほんの少し 55% 46%

 これだけの差が出ているので、フィンランド政府は「ベーシックインカム制度は心身ともに幸福感に効果あり」と結論づけています。

・自動的に入って来るBIのおかげで前向きになれた
・自由になれると人はより生産的になれる。好きなことに集中できる

 フィンランドの例で分かることは「お金を配ると働かずに怠ける」ではなかったということです。より落ち着いて集中して働くことができ、仕事のやる気もキープできています。

カナダのベーシックインカム実験:2017年

カナダのベーシックインカム実験:規模4,000人の場合

 カナダ オンタリオ州では2017年にベーシックインカムの実験が行われました。規模は4000人ほどでした。支給された額は・・

カナダのベーシックインカム
  • 低所得・独身の世帯 年間約134万円

  • 既婚世帯 年間約190万円

 仕事をしている方は収入の50%がベーシックインカムから差し引かれるルールでした。実験は3年間の予定でしたが、その途中で政権が変わった影響もあり実験は予定よりも早く打ち切られました。

 州政府をはじめ専門家は「この試みは失敗」という認識をしているのですが、そんな中で・・

良好なデータあり
  • 仕事を辞める人はいなかった

  • より幸福を感じて生活できた

 こんなプラスの要素も確認できており、ベーシックインカムの導入でどのように心境が変化するのか興味深いデータが得られています。

アメリカ、ドイツなどでベーシックインカムの実証実験スタート

 2020年ドイツ経済研究所によるベーシックインカムの実験では・・

120人のドイツ人が3年にわたって毎月1200ユーロ(約15万円)を受け取る。

 また、アメリカにおいては2021年、アメリカ最大規模のベーシックインカム・プログラムが承認されました。

シカゴ市は、5000の低所得世帯に対し、1年間に渡って毎月500ドルを支給する。

 500ドルは約6万5,000円ほどです。このプログラムに参加する条件は年収が3万5000ドル(約398万円)以下、抽選ではなく無作為に選ばれます。

2021年 日本でもベーシックインカムが政権公約に

日本でもベーシックインカムが政権公約に

 海外のニュースとしてベーシックインカムの仕組みが報道されるようになると・・

日本でベーシックインカムはいつから?可能性はある?

 この話題が出るようになりました。海外に比べてまだ日本は議論する段階まできていませんが、政権公約にベーシックインカムを見るようになりました。日本維新の会では「日本大改革プラン」として・・

政府が国民に一定額の現金を毎月、無条件で支給する「ベーシックインカム(BI、最低所得保障)」の導入

 これをポリシーとして掲げています。

 日本国内で可能なベーシックインカムはどんな内容になるのか?議論される可能性はより高まってきています。

2022年 韓国 大統領選挙の公約にベーシックインカム

 2022年に韓国にて大統領選挙がありましたが、与党候補のイ・ジェミョン氏は、増税分を財源にすることで・・

全国民を対象とした年100万ウォン(約9万7000円)の基本所得(ベーシックインカム)を支給

 この政策を提示していました。与党のイ・ジェミョン氏は僅差(得票率:47.83%)で敗れたものの、ベーシックインカムを公約に掲げる候補を国民の半数近くが支持した例だといえます。

ベーシックインカム反対派の理由とは

ベーシックインカム反対派が問題としている理由とは

 ベーシックインカムに反対の意見は非常に明確なものです。

ベーシックインカム 反対
  • 政府の財源不足が懸念されること

  • 国民の勤労の意欲が失われる

  • 海外から国内への移民が多くなる

 最大の問題は財源の確保が困難であることです。スイスで国民投票をしたプランのように一人に27万円を支給するなら、単純に考えても一人あたり・・

財源はあるか?
27万円の生産性が求められます

 この答えが明確に示せるかがポイントになります。

少子化対策には大きなプラスになる

少子化問題が改善する可能性がある

 ベーシックインカム制度は少子化問題にはかなり有効な効果が出ると見られています。高崎経済大学 古澤氏によると、少子化にまつわる社会保障では、2つの要件があり・・

重要な2つの要件
  • 経済的弱者を支え、失業や加齢のリスクに保険を適用する。

  • 少子化を改善する。

 上記に挙げている・・

2要件を満たす社会保障とは ベーシックインカム意外に考えられない。

 としています。仮にスイスで検討されたベーシックインカム制度を基にして「子供の数が増えたとき」を試算するとこうなります。

ベーシックインカムの金額と人数(月あたり)
毎月 年間
大人2人 毎月57万円 684万円
大人2人+子供3人 毎月78万円 936万円

 子供が3人いれば900万円以上の給付になるため、子供3人が大学を目指すことができる十分な貯金額を確保できます。

まとめ:ベーシックインカム いつから

 財政破綻を起こさないベストなバランスでベーシックインカムを運用できるなら、少子化対策にはとても有効な対策となることが期待できます。

 海外のベーシックインカム検証の事例が増えていくことによって、日本でのベーシックインカム導入を議論する意識も より高まっていくはずです。